はじめに
近年、エシカル食品(エシカルフード)への関心が急速に高まっています。
エシカル食品とは、環境保護や社会的公正を重視した生産過程を経て作られた食品を指します。
このような食品を購入することは、消費者としての責任を果たすだけでなく、地球環境や社会全体に多くのメリットをもたらします。
本記事では、エシカル食品の購入がもたらす具体的な環境保護のメリットについて詳しく見ていきます。
エシカル食品とは?
まずは、エシカル食品とは何かについて簡単に説明します。エシカル食品は以下のような特徴を持っています。
- 環境に優しい生産方法:有機農法や持続可能な漁業など、環境に負荷をかけない方法で生産されている。
- 動物福祉の尊重:動物の福祉を考慮した飼育方法が採用されている。
- 公正な労働条件:生産者が適切な労働条件で働いていることが保証されている。
これらの特徴を持つエシカル食品は持続可能な未来のための選択肢として注目されています。
環境保護のメリット
温室効果ガスの削減
エシカル食品の生産は、従来の農業や畜産業に比べて温室効果ガスの排出量が少ないことが多いです。有機農法では化学肥料や農薬の使用が制限されているため、これらの製造過程で排出される二酸化炭素の量が減少します。また、放牧による畜産業は、集中飼育に比べてメタンガスの排出が少ないとされています。
具体例:有機農業の影響
有機農業が温室効果ガスの排出を大幅に削減することができるというのは、多くの研究で支持されています。
例えば、カリフォルニアの例では、有機農業の採用により、従来の農業と比較して温室効果ガスの排出が大幅に削減されることが報告されています。特に、化学肥料や農薬の使用が禁止されているため、これらの製造過程で排出される温室効果ガスの削減に寄与します。ロデール研究所の40年にわたる研究では、有機農業が従来の農業に比べて45%もエネルギーを少なく使用し、同時に収量が同等以上であることが示されています。
https://www.nrdc.org/bio/lena-brook/organic-agriculture-helps-solve-climate-change
また、MDPIに記載されている研究では、有機農業の土壌管理が炭素の土壌中への固定を促進し、窒素酸化物(N2O)の排出を抑制することが示されています。このように、有機農業は持続可能な農業方法として、温室効果ガスの排出を効果的に減少させることができます。
https://www.mdpi.com/2073-4395/14/1/222
土壌の健康維持
エシカル食品の生産では、土壌の健康が重視されます。有機農法では、化学肥料や農薬の使用が禁止されているため、土壌の微生物や昆虫が豊かに保たれ、土壌の生物多様性が維持されます。これにより、土壌の肥沃度が高まり、持続可能な農業が可能となります。
具体例:有機肥料の使用
有機農業では、堆肥や緑肥などの有機肥料が使用されます。これにより、土壌中の有機物含量が増加し、土壌の保水力や栄養供給能力が向上します。長期的には、これが作物の収量を安定させるだけでなく、土壌の侵食を防ぐ効果もあります 。
水資源の保護
エシカル食品の生産は、水資源の保護にも寄与します。有機農業では、化学農薬や化学肥料が使用されないため、これらの物質が地下水や河川に流れ込むリスクが低くなります。これにより、水質汚染が防がれ、生態系への影響が軽減されます。
具体例:持続可能な漁業
持続可能な漁業は、魚類資源の過剰漁獲を防ぎ、海洋生態系を保護します。認証を受けた持続可能な漁業では、漁獲量や漁法が厳格に管理されており、これにより水中の生態系バランスが保たれます。また、持続可能な漁業によって採れた魚介類は、消費者に対しても安心して食べられる選択肢を提供します 。
生物多様性の保全
エシカル食品の生産は、生物多様性の保全にもつながります。有機農法や放牧による畜産は、農地や牧草地に多様な植物や動物が生息できる環境を提供します。これにより、生態系全体が健全に保たれ、自然環境の多様性が維持されます。
具体例:ポリカルチャー農業
ポリカルチャー農業(複数の作物を一つの農地で同時に育てる方法)は、有機農業の一つの形態です。
この方法は、モノカルチャー(単一作物の大量栽培)に比べて病害虫の発生リスクが低く、農薬の使用を減らすことができます。また、異なる植物種が互いに補完し合うことで、土壌の栄養バランスが保たれ、長期的な農地の健康が維持されます
コロンビア南西部のある地域では、シェードツリーとカカオを組み合わせたアグロフォレストリーシステムが実践されています。
アグロフォレストリーとは木々や低木を農地に組み合わせる手法で、コーヒーやカカオの栽培で特に一般的です。樹木は土壌の侵食を防ぎ、日陰を提供することで作物の成長を助けます。また、樹木からの落ち葉が土壌の有機物として役立ちます。
この地域ではグメリナ樹とカカオを一緒に育てることで、単一のグメリナプランテーションよりも炭素貯蔵量が増えたことが報告されています。このシステムは、土壌の有機物含量の向上にも寄与し、農業生産性と環境の回復力を高めています。
https://www.mdpi.com/2071-1050/14/15/9447
エシカル食品の購入方法
エシカル食品を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
地元産品の購入
地元で生産された食品を選ぶことは、エシカルな選択の一つです。地元産品は輸送距離が短いため、輸送による環境負荷が低くなります。また、地元の農家や漁業者を支援することで、地域経済の活性化にも貢献できます。
認証マークの確認
エシカル食品には、さまざまな認証マークがあります。これらのマークは、食品が特定の基準を満たしていることを証明するものです。
例えば、有機JAS認証、フェアトレード認証、MSC認証(持続可能な漁業)などが代表的です。これらのマークを確認することで、信頼性の高いエシカル食品を選ぶことができます。
シーズナルフードの選択
季節に応じた食品を選ぶことも、環境保護に寄与します。シーズナルフードは、その季節に自然に育つため、人工的な栽培方法や保存方法を必要としません。これにより、エネルギーの消費を抑え、環境への負荷を軽減できます。
結論
エシカル食品の購入は、環境保護に多くのメリットをもたらします。温室効果ガスの削減、土壌の健康維持、水資源の保護、生物多様性の保全など、さまざまな側面で持続可能な未来を支える力となります。
私たち一人ひとりが日常の食生活でエシカル食品を選ぶことで、地球環境の保護に大きく貢献することができます。エシカル食品を積極的に選び、持続可能な社会を築いていきましょう。